住宅を考えるに当たって、知っておかなければならないことは山ほどありますが、今回はサイズのお話です。
設計モジュールというと何やら難しそうに聞こえますが、要するに家が設計される時に、基準とする単位のことです。この単位によって家の基本サイズが決まりますので、同じ間取りであっても単位が違えば家の広さが違ってくるわけです。
家によって広さが違うというと、たぶん畳のサイズを思い浮かべる方が多いかもしれません。何度か引越しをするうちに、同じ六畳といってもずいぶん広さが違うよね、と思ったことがあるでしょう。
関東と関西では畳の広さがかなり違いますし、いわゆる団地サイズというものもあります。極端な話、関西の一戸建てから関東の団地に引っ越してくると、同じ六畳でも、もの凄く広さが違うと感じる筈です。
しかし、畳のサイズと設計モジュールは違う話なので、まず設計モジュールから説明して、頭の中を整理します。
設計モジュールには、「尺モジュール」と「メーターモジュール」があります。
尺モジュールは日本で多く使用されてきた単位で、戦後の日本の建築では、910mmが基準になっています。
一方、メーターモジュールは、前は輸入住宅限定の話だったのですが、昨今はバリアフリーを考える人も増えたせいか、このメーターモジュールを採用することも多くなりました。
実際には、尺で統一して家を建てる場合、メーターで統一して家を建てる場合、尺とメーターを混在させて家を建てる場合など、さまざまなケースがあります。しかし基本はまず、どちらかに統一したほうが混乱がない筈です。
また、多く流通している建材の規格が、どうしても尺モジュールのものが多いので、無理に全部をメーターモジュールにすると高くついてしまう場合もあります。
しかし希望にあわせて、部屋は尺モジュールで、間口や廊下は車椅子でも楽に通れるようにメーターモジュールで設計する、ということもできるわけです。
ここで覚えておいたほうがいいのは、坪単価と設計モジュールの関係です。
住宅の価格を検討する時に、坪単価というものが1つの目安になりますが、実はこの設計モジュールによって、坪単価が高く見えたり安く見えたりする場合もあるのです。
例えば尺モジュールで、間口・奥行とも4間の家を建てるとして計算してみます。
坪数だと単純計算で4間×4間=16坪ですが、面積では約53平米です。
一方、メーターモジュールの場合、1間を2000mmで計算することになりますから、面積は64平米で、坪換算だと約19.4坪になります。
尺モジュールとメーターモジュールでは、面積では約20%も違いがあるわけですが、同じ間取りとすると、坪単価の建築費では面積の広いほうが安く見えてしまう結果になるわけです。
土地の場合には絶対的な面積で考えますので、こういうことは起こりませんが、建築の場合には、相対的に変わる値と絶対的な値が混在しているので、費用が高く見えたり安く見えたりするケースもあることは、把握しておいたほうが良いでしょう。
日本人は家の広さを考えるのに、まだまだタタミ何畳ぶんかでイメージしたほうが分かりやすい人が多いようです。しかし実際には、畳のサイズはかなり違います。
実際の建築においては、畳はその家…というよりも部屋に合わせたフルオーダーですので、サイズは微妙にバラバラです。Aの家の畳をBの家に持って行って使う、というのは、よほど最初から使い回しを前提にして作らない限りは難しいでしょう。
この畳のサイズの問題も、整理しておいたほうが良いでしょう。地域によって標準となるサイズが違いますが、だいたい次の四種類です。広さ順です。
・京間 = 955mm×1910mm = 1.824u
・中京間 = 910mm×1820mm = 1.6562u
・江戸間 = 880mm×1760mm = 1.548u
・団地間 = 850mm×1700mm = 1.445u
同じ尺モジュールでも、上のように4種類があるわけですが、団地間6畳は京間の面積に換算すると4.8畳になります。これが体感的にどのくらい違うか、ソフトで作成してみました。神棚のある和室です。
座卓は1400mm×800mm、飾り棚は1800mm×430mmです。建具も家具も同じものなので、微妙な差が分かりやすいと思います。
建具は建築の時に決まってしまいますが、家具選びもお部屋のサイズに合わせて、きっちりとサイズを確認した上で検討したいものです。
京間の六畳 | 団地間の六畳 |
神棚のある和室(クリックで拡大) |
住宅の話とは直接関係ありませんが、単に尺と言ってもいろいろ種類があり、代表的なものに二種類あります。筆者の実家は父親が電器・機械や工作を扱い、母親が洋裁・和裁をやるので、家の中で二種類の尺とメーターが混在し、何やら話がこんがらがってしまうので、決して単に「○尺」とは言いませんでした。
通常、尺貫法では一尺=約30.3cmということになっていますが、実はこれは曲尺(かねじゃく)のことです。
どちらもメーター表記と併用で使用される場合が多いですが、30.3cmと38cmでは全然違うので、どの世界で何の話をしているのかをわきまえておく必要があります。「○センチでお願いします」と言っても、職人さんは「はい、○尺○寸なのね」と脳内変換してしまう人が多いので、知らないと話が通じにくくなります。
筆者の実家でも、ときどき漫才のようなやり取りをしていたのを思い出します。
父「ニ尺の箱こさえたから、これにかける覆いを縫っといてくれ」
母「ニ尺の箱なら覆いには二幅半要るねえ」
父「馬鹿、俺のニ尺よりお前のニ尺のほうが長いだろう」
母「だって、ニ尺にニ尺の布使ったら縫い代が足りなくなるじゃないか」
とまあ…遊んでいるのですが(笑)、鯨尺というのは縫い代や洗張りを見込んだ幅と考えると、単に規格がバラバラなのではなく、あんがい合理的なのかもしれません。
曲尺の物差しはだいたい金属でL字型のものが多く、鯨尺の物差しは裁縫で使いますので、竹製がほとんどです。
考えてみると、剣術や居合道では和服で日本刀を振るっているわけですが、そんな人達も、裄丈1尺7寸4分の着物と刃渡り2尺2寸5分の刀を注文するとか言っても、それぞれ違う基準なわけですね。尺度の違うお話でした。
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