風水学講座:目次

環境学としての色彩の話

色に関するエピソードと色の性格


カラー風水なるものがありますが、今回はそういう話ではありません。きちんとした根拠のある色彩心理学を知り、日常の生活に生かして、暮らしやすい環境を構築していこうというお話です。

その前に、もう一度、誤解を解いておきますが、風水と色とは、直接の関係はありません。ですから、西に黄色のものを置いても、金運がついたりはしません。


定位盤と該当する色

風水で言う「色」とは、例えばこういうことです。
風水や気学の原理となっているものに、定位盤というものがあります。
西の方位は、定位盤では兌宮で、十二支では酉の方位です。
兌宮とは夕陽の沈む方位で、時間で言えば夕方に当たります。兌宮の象意を端的に表す為に、便宜上、夕陽の茜色を当てたもので、茜色(オレンジ色)と兌宮の働きには、直接の関係はありません。まして、兌宮と相性の良い九星の色がラッキーカラーだというのは、こじつけに過ぎません。

通販メーカーで発売している、500色の色鉛筆という商品がヒットしています。数々の色を自分の身の回りに置くのは魅力的なことですし、今自分がどんな色を身につけたいかでも、その日の体調や心理状態、また自分がどういう風になりたいか?を判断することもできます。
なので、ラッキーカラーのことはサッパリと忘れていただき、日常生活にある「色」のことを、きちんと考えてゆきます。
まず、色に関するエピソードの数々をご紹介しましょう。



色のエピソードその1:闘牛の赤マント

闘牛の牛は、赤い色を見ると興奮するので、赤いマントをひらひらさせると突進してくるというのが通説になっています。それでは、青だったら冷静になって襲ってこないのでしょうか?

ずーっと、この説を信じてきた人は居ませんか?
実はこれは間違いです。人間とサル以外の動物には、色を見分けることはできません。牛が突進してくるのは、ヒラヒラ動くものに反応しているので、赤いマントでなく別の色でも、挑発的な動きがあれば、牛は突進してきます。

それでは何故、闘牛には赤いマントと相場が決まっているのでしょうか?
それは、闘牛場にいる観客を興奮させて、盛り上げる為です。見世物ですから、とにかく観客が盛り上がってくれないことには、仕事になりません。人間はじっさい、赤い色を身につけると、体温が上がって興奮しやすくなります。闘牛場でも、最も彩度の高い目に付く色=赤をヒラヒラさせて盛り上げているのです。

闘牛の赤いマントは、人間の為の小道具だったのですね。
でも、ペットのワンちゃんもニャンコも、私たちとは違ってモノクロの世界に住んでいるかと思うと、なんだか微妙な気もしてきますね。少し寂しいかも…


色のエピソードその2:危険な橋

ロンドンのテムズ川にかかっている(いた?)、ブラツフライヤーズ橋は、一時、自殺の名所だったそうです。この橋の欄干は鉄で、黒い色でした。
そこで、この欄干を薄緑に塗り替えたところ、急に自殺者が減ったそうです。

これは古い占術の本で読んだ話なので、時期などは分かりませんが、確かに納得はいきます。どんな大きさの橋にせよ、歩いて渡る橋の欄干が全部真っ黒というのは、あまり好ましくない気がします。
橋というのはもちろん川の上にかかっているわけですが、川には当然、水が流れています。水というのは、陰陽学では黒を配当します。水=坎(かん)の性質というのは暗く低く重く、下へ下へと落ち込んでゆく性質があります。
川が坎なのに、そこに同じ坎の色の橋をかけたのでは、重くなりすぎて下へ下へと引きずり込まれそうな感じがしてしまいます。現実的にも、腐食したり壊れている部分があっても、黒では眼につきづらくて危ないですよね。
そう考えると、橋には明るく軽めの、しかも落ち着いて渡れる感じの色が相応しいことになります。明るいグリーンというのは正解だったのです。今度から、橋の色にも注意してみると面白いでしょう。


色のエピソードその3:重い荷物

ある工場での話です。製品の部品を入れて運ぶのに、黒い金属の箱を使っていました。しかし、運ぶのに、重くて骨が折れるという不満が多かったそうです。
そこで、同じ箱を薄い緑に塗り替えたところ、不平を言う人が居なくなったそうです。

これは、工場以外の他の場合にも、よく出てくる話です。色には重い(重く感じる)色と軽い色があり、明度が高いほど軽く、低いと重く感じます。
また、柔らかい色と硬い色の違いもあります。ベビー服などは楽に抱き上げられるように、明るく柔らかいパステルカラーが使われます。

工場で、鉄の工具箱が黒だったら、いかにも硬くて重く感じてしまうのも無理のないことです。手で持ち運ぶことが多いダンボールはほとんど、ベージュか白です。引越しのダンボールが全部黒い色だったら…引越し屋さんがバテてしまって、とても作業がはかどらないでしょうね。建築現場のブロックが全部真っ黒だったら…考えるとちょっと怖いです。
これから考えると、バッグが重くて仕方のない人は、黒いバッグを持つよりも、なるべく白や明るい色のバッグを持ったほうが楽に感じるわけです。バテ気味のあなた、工夫してみると良いかもしれません。


色のエピソードその4:ドレスの色戦争

ナポレオンは無類の女好きで有名ですが、第二夫人が特に寵愛を受けて天狗になっていました。皇后のジョセフィーヌは面白くありません。その為、一計を案じました。
あるレセプションに出席する為、第二夫人がダークグリーンのドレスを新調していることを耳にしたジョセフィーヌは、会場のインテリアと家具一式を、ブルーに塗り替えてしまったのです。
その為、会場に現れた第二夫人はどうにも趣味が悪く映り、格好がつかなくなってしまったということです。

これは、よく分かります。ちょっとしたお部屋のカーテンとソファの色を考えるだけでも、グリーン系とブルー系が混じってしまうと、どうにも統一感がありません。もしブルーとグリーンを一緒に使う場合は、ポップだったりサイケな雰囲気だったりという、一定のトーンの元に許されるわけです。
宮廷のレセプションで奢を競うには、周りと調和した上で目だつことが必要です。このケースでは、たぶん変な浮き方をしてしまったことだろうと推測されます。

こういう勝負ドレスに関する問題は、古今東西変わらないようで、世界中のセレブリティ達も、大きなパーティで着るドレスには、非常に気を使うようです。
近年では、パーティで着るドレスが他人とバッティングしないよう、また自分のドレスがその場に調和するかどうか予め分かるように、パーティごとに着るドレスを登録するネットサービスがあります。
どんなもんかと興味津々でアクセスしてみましたが、筆者にはドレスのブランド名がちっとも分かりませんでした(笑)。


色のエピソードその5:目障りなバッグ

これは、筆者自身の体験です。ある時、稽古着や本などを沢山詰め込めるように、少し大き目のバックパックを買いました。明るいレンガ色で、使いやすくてとても気に入っていたのですが、何度か使っているうちに、とてもこのバッグが気になりだしました。

どうもこのバッグを持って混んだ電車に乗ると、「こんな大きなバッグ…邪魔…」という目で見られることが多いのです。そんなに極端な大きさでもなく、背中に背負わずに小脇に抱えているので、それほど邪魔な筈はないのですが、目立ちすぎてしまってなんとなく周りの人が気にするので、必ず網棚に乗せなければなりません。

そこで仕方なく、別の黒いバッグをまた買いました。今度は前のレンガ色のバッグよりも一回り大きいのに、そのまま肩にかけて電車に乗っても、全く誰も気にしません。
色というのは、こんなにも影響するかと思ったものです。



色彩の持つ基本的性格

このように、色彩にもそれぞれ、性格があります。代表的な色の性格は次の通りです。

赤は、表現力と積極性を増す力があります。開放的で大胆な気分になりますが、その反面、衝動的になったり、考えが散漫で落ち着きがなくなります。強い外交性とリーダーシップを持ちますが、目立つぶん、使い方の難しい色です。
黄色は気分を前向きに発展的にさせてくれる色ですが、その反面、刺激に敏感になり、気分が変わりやすくなる傾向があります。そのため、落ち着きがなくなり短期になります。献身的な気分も出てくるので、団体スポーツに多く使われるのも頷けることです。
緑は成長、発展を表す色ですが、その反面、治癒能力のある色です。慈愛、寛大な心も表します。寒色でも暖色でもなく、双方の意味合いがあるので、場所を選ばず使え、バリエーションも多いのでいろんな使い方ができます。
青は寒色の代表で、冷静さと知性を表します。抜群の集中力を持つので、知的作業には最適ですが、一面、閉鎖的な一面もあるので、コミュニケーション能力に問題があります。落ち着いて安静にしたい時には効果的です。
白は清廉潔癖さと純粋な正義感を表します。反面、敏感さと鋭利さを持っているので、多用すると怒りっぽく神経質になる傾向があります。自己主張がないのでどんな色とも合いますが、完全な白はトゲトゲしさがあるので、衣服には柔らかい白が良いでしょう。
黒は停滞、孤独、憂鬱、迷いなどを意味しますが、忍耐心、持久力、堅実さなども持つので、使う人の個性次第です。白と同様、他の色を邪魔しませんが、配色に黒を使うとダイナミックになるので、アクセントカラーに最適。インテリアには小面積に留めましょう。
ベージュはグレーと同様、柔らか味があって安心感のある色です。人の肌色や木肌に近いので飽きがきませんが、存在感が弱いので、ベージュやグレーを多用すると、締りのない印象になります。他の強い色をアクセントカラーに使うと良いでしょう。
茶は大地の色なので、人間と相性がよく、気分を落ち着かせる色です。あまり自己主張のない色だがバリエーションが豊富なので、主役にも脇役にも、いろんな使い方ができます。家具に茶色系統を多用して飽きることがないのも自然なことです。


ここまではごく一般的なお話で、万人に共通のことです。しかし、今回のテーマは、色が人間に与える影響です。

人間にもいろいろ、性格があって違いますよね。赤が興奮しやすくなるというのは分かりましたが、大人しい人が少し興奮するのと、もともと慌て者だったり、お喋りで賑やかな人が興奮するのとでは全く違いますよね。
この違いをきちんと考えないと、運命学とか環境学に応用するには事足りません。

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