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方位と地図のまとめ・中級篇


ビギナー篇で、地図の図法には大きく分類して二種類あることを述べました。

1、正積図法グループ(面積は正しいが、中心から離れるほど形状のひずみが大きくなる図法
2、正角図法グループ(経線と緯線が直角になるが、距離、面積、方位は大きくひずむ図法)


このうち、方位の正しい地図は、正積図法グループに属します。代表的なものに、ランベルト正積図法、正距方位図法などがあります。これを少し検証してみましょう。

なぜ、方位を見る地図が、「面積の正しい地図」に属すのかというと、これは距離、面積と方位には、密接な関係があるからです。
各図法には複数の要素が絡みあっています。後に述べるように、ある地点からある地点への方位を見る場合には、最短距離の方角で方位を見なければなりません

二つの図法の特徴を、じっさいに地図を見て理解してください。
まず、下に3種のグリーンランドの地図があります。これはいろんな正積図法で描いたものです。すべて面積は同じですが、投影法によって、似ても似つかない形になってしまっています。正積図法の特徴です。
なぜグリーンランドを取り上げたかと言うと、極地に近く、図法による形状の違いが最も著しく現れる例だからです。

方位地図三種・グリーンランド


次に下図で、二つの場所を、正積図法と正角図法で表してみます。グリーンランドとアラビア半島という、比較的近い面積を持った半島を取り上げました。

この二つが良い比較の対象であるのは、実際の面積が割りに近いにもかかわらず、グリーンランドは極地にあって図法による面積や形状の違いが著しく、アラビア半島は赤道上に近い位置にある為に、図法によるひずみがそれほど大きくないからです。

下図上段が、正積図法によるグリーンランドとアラビア半島です。両者の面積には、極端な違いは認められません。どちらも、本来の面積比率に近い結果で描かれています。

ところが、下図下段の正角円筒図法(メルカトル図法)による、グリーンランドとアラビア半島を比べてみてください。
北極点に近いグリーンランドは極端に面積が拡大されていますが、赤道に近いアラビア半島は、逆に少し縮小されてしまいます。メルカトル図法ではこのように、面積のひずみが大きいのです。両者を見比べてみて下さい。

正積方位図法・グリーンランド(左)とアラビア半島(右)
正積方位図法・グリーンランドとアラビア半島
正角円筒図法(メルカトル)・グリーンランド(左)とアラビア半島(右)
メルカトル図法・グリーンランドとアラビア半島

方位を見る際の問題

このように、作図法によって、地図の形状は大きく異なってきます。
方位を判断する場合の最大の問題は、方位図法以外の投影法で作った地図は、赤道線上以外では、北極、南極へ近づくほど面積の違いが大きくなることです。
上で正積図法と正角図法の違いを、グリーンランド、アラビア半島を例に取り上げたのは、方位は距離、面積と密接にかかわりがあるからです。
面積が違うということは、距離もひずみが大きくなり、後に述べる、正しい方位角が計測できなくなります。

メルカトル図法で広い範囲の方位を見ると、北極、南極に近づくにつれて極端に面積が引き伸ばされます。
点であるはずの北極点、南極点が、水平線になって長く伸びています。当然、南極と北極付近の面積も、実際よりもかなり誇張されてしまいます。

面積が拡大されるということは、とうぜん、距離も実際よりも引き伸ばされます。これは方位を見る上においては、大きな問題となります。
それは、次に述べる「方位角は最短距離と密接な関係がある」ためです。


日本を中心とした方位地図

東京を中心にした地図を作成してみます。ランベルト正積方位図法です。
東京からロスまでは、完全に北東になります。北アメリカのほとんどが北東です。


東京を中心とした方位の正しい地図

東京中心の方位地図


次に参考までに、メルカトル図法の地図で、東京からロスまでの線を引いてみます。
この二つの地図を比べてみると、方位が全く違うことがわかります。
上の方位図法では東京からロスまでは完全に北東ですが、下の図(メルカトル図法)ではほぼ真東に見えます。ですが実は、大圏コースと書いてある赤い線が、先ほど述べた最短距離の航路=正しい方位です。


メルカトル図法の大圏コース
(実際は最短距離の筈なのに、曲線になっている)

メルカトル図法・大圏コース

方位角というものは、最短距離を基にして計測されます。少しイメージを働かせてみれば分かると思いますが、ぐにゃぐにゃと遠回りしたコースの場合、目的地に真っ直ぐに向かっていない地点では、違う方角を向いてしまっています。
真っ直ぐに最短距離を通らない限り、正しい方位は分からないのです。
最短距離を取るということは、とりも直さず面積の比率が正しいということにほかなりません。

距離と面積のひずみの大きい地図では、方位を確定することはできません。極地へ近づくほどひずみが大きくなってしまいます。
そのため、赤道上以外では、「起点となる場所を中心とした各地への最短ルート地図」をその都度作成しなければ、正しい方位を知ることはできません。

したがって、メルカトル図法の地図に直線で方位の線を引くと、赤道上以外では目的地とは全く違う場所に行ってしまいます
これらの問題は、占いの本であっても、正しい研究を行っている団体で出版している本は、正しい世界の方位を掲載しています。ただし、まだ図法に関する記述は不十分で、メルカトル図法の地図に、曲線で方位の分界線を引いている場合が多いようです。

また、方位図法の特徴として、スタート地点を中心にした地図を、その都度出力しなければなりません。A地点を中心とした地図で、B地点を中心とした方位は分かりません。

そこで、地図ソフトの出番です。
当サイトの方位地図ライブラリには、地図ソフトで出力した方位地図が、豊富に掲載されています。日本各地、世界各地をカバーしていますので、ぜひご利用下さい。

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(2000年頃記述)
2009年11月改訂・3章に分割

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