風水学講座:目次

「土用」が暗示する健康と運命


「木の芽どき」

古来、春をさして「木の芽どき」と言う場合がある。
文字どおりに捉えると、草木が勢いよく芽吹く春、ということになるが、この言葉に心当たりのある方は、どちらかというと、あまり芳しくないことを連想するのではないだろうか。

この”木の芽どき”にはいろんなものが芽吹くので、要注意の時期だと言われる。進学、就職などは目出度い場合もあるだろうが、人間、そう順調にいく人ばかりではない。新しい環境に慣れるのが大変で、心身ともにバランスを崩す人も出るだろうし、持病のある人は病気も芽吹いて暴れだしやすい。

春で一年の変わり目だから…と片付けてしまえばそれまでだが…。
季節を見るのに一番便利なニ十四節気を見ると、この時期はちょうど春の土用である。春の土用とは、立夏の前の18日間をさすが、立夏はだいたい5月5日ごろなので、春の土用はだいたい4月半ばから5月の初めまでの期間だ。

土用というと、「土用の丑の日…って夏じゃなかったっけ?」と一般の人は思いがちだが、どっこい土用は夏だけではなく、一年に四回ある。

一年には春夏秋冬の四季があるのは誰でも知っているだろうが、土用に関しては、意外に意識しないのではないだろうか。しかし、これを知っているのと知らないのでは、大違い。土用は健康と運命に、非常に密接な関係があるのだ。

まず基本から。四季にはそれぞれ、五行が割り当てられている。
春=木性(草木が芽吹くと考えると覚えやすい)
夏=火性(夏は当然、日差しが強くて暑い)
秋=金性(秋は空気が澄んでいる。金性=透るの意)

冬=水性(冬は水のように暗く、冷たい季節)


以上の説明は、単純に覚えやすくする為の方便で、本当は五行の説明にはなっていない。五行とは天地自然の性質のことであり、物質のことではないので、木性=植物の木ではないのだが、植物は木性の性質を持つ代表的なものなので、木性を説明するのに使われているだけだ。

「土気」とは

しかし、春夏秋冬の四季に木火金水の四つは当てはまったが、「土」が抜けている。
ということで、「土性」とはナンなのか、もう一度、他の章も思い出して欲しい。風水学講座の中では「五黄殺で開運?」とか「暦の話」とか。

「五黄殺」は、気学では最も有名な言葉の一つかもしれない。五黄土星が有名なのは、「土性」とはいろんな性質の入り混じったもので、それだけに働きが激烈で、すべてのものが土性の影響を受けるからだ。ここに「殺」をつけてしまったので、いかにもおどろおどろしい響きがあるが、「殺」にはいろんな意味がある。

代表的なのは「殺人」「殺生」「抹殺」「殺戮」など、生命を奪ったり無くしてしまうことを差す言葉だ。
しかし、意味を強める場合にも「殺」を使う。「忙殺される」「殺到する」など。また逆に、意味を弱める場合にも使える。「相殺する」「減殺する」など。意外に便利というか、幅の広い言葉だ。

純粋な意味で五黄土星イコールの悪ではないことは、きちんと風水学の勉強をしていらっしゃる方はお分かりだと思うが、マニュアル通りに「五黄殺=×」だけでなく、土性と結びつけて考えてもらうと、いっそうよく理解できるだろう。

この、意味を強めたり弱めたり、生殺与奪の鍵となるのが土性の一つの性質だとすると、もう一つの代表的な性質は「混じる」ということだ。物質の土を考えてもらうと分かり易いが、土はいろんなものが混じっているし、有機物も無機物も、最終的には土に還る。
「灰は灰に、塵は塵に」ではないけれど、ある意味で土に還るというのは最終的な解決でもあり、滅亡と再生を土性が表すのはとてもよく分かる話だ。

キリスト教のことはよく知らないけれど、この「灰は灰に、塵は塵に、土は土に」というのは何だかサラッとしていて、筆者は割りと好きな言葉だ。旧約聖書からの引用だそうだが、これが仏教のお弔いだと、もう少し「念」とか「感情」に重点が置かれているような気がする。
「故人の想いを汲んで」とか「故人の気がかりを取り除いてあげるように」という方向で、僧侶の説法がなされるのをよく聞く。日蓮宗と真宗の葬式しか経験がないが、知り合いの日蓮宗のお坊さんが急死された主婦の葬式を急に依頼された時など、なかなか興味深かった。

肉体は滅んでも、まだ故人がそこに居るような感覚で話をし、それが生者にも死者にも納得のいく様な、なかなか人の生活感情に添ったものだったので、あれ?これって葬式のマニュアルにあるのかしらん?と思った。
そのお坊さんとは、普段、冗談を言いつつよく一緒に飲んでいたので「彼、思いがけなく話がうまいねー、けっこう立派に見えたよ」と言って笑ったものだ。
もともと、仏教じたいが、あまり生者と死者を厳密に隔てることがなく、お盆には地獄の釜もお休みで、死者が休暇を貰って帰郷する、というのが当たり前になっているので、自然とこういう雰囲気になるのだろうか。

とすると、葬式の時にわざわざ「土は土に、塵は塵に」と言い渡すのは、やはり物質性の強い考え方なのかもしれない。後に残された者からすると、愛し慈しんだ者がただの土に帰ってしまうと考えるのは、やはり悲しいだろう。
一方、仏教のお葬式って、説法の上手なお坊さんに話をして貰うと、何だかホッとするのだが…

筆者の常の通り、盛大に話はそれたが、土は破壊創造の役割をし、モノを混沌とさせる。混沌というとあまり良くない現象のようだが、混沌が必要な場合もある。季節の推移もその一つだ。
春から夏に移り変わってゆく為に、間にいったん、土用が入る。いきなりある時間を境に、春から夏には変わらない。暑くなったり寒くなったり、風が吹いたり雨が降ったり、雷が鳴ったり雹が降ったりカエルが降ったりして(映画の話だが)行きつ戻りつしながら季節は変わってゆく。
その変化を司るのが、土用の役割だ。だから、四季の間には、全て土用の時期がある。それぞれ18日間だ。


春夏秋冬それぞれの土用

で、ここが肝心なのだが、土用といっても一年に四回の土用、全部同じではない。もう一度思い出して欲しいのだが…
春=木性
夏=火性
秋=金性
冬=水性


四季に五行が配当されている通り、春の土用は特に木気に影響のある土用だ。木性は身体で言えば肝臓にあたる。肝臓の弱い人、肝臓に持病のある人は、春の土用は特に要注意だ。

春の土用は立夏(5月5日頃)の前の18日間。
春に体調を壊しやすい人、アレルギーや蕁麻疹が出たり、黄疸が出る傾向はないだろうか?春=木性はそもそも「風」の意味もあるので、もちろん風邪も引きやすい。しかし、秋や冬の風邪が肺や腎臓に来やすいのに対し、春の風邪は咽喉が要注意だ。春=東=三碧=咽喉だ。

夏の土用は立秋(8月7日頃)の前18日間。
夏の火気は心臓に注意
です。心臓の強くない人は、暑気あたりにじゅうぶん注意を払う必要がある。炎天下の激しい運動で一番負担がかかるのは、もともと一番エネルギーを消費する心臓だ。また、夏風邪が心臓にきやすいのは意外に気づきにくいので、夏風邪が長引くという方は、循環器系を疑ってみよう。

秋の土用は立冬(11月7日頃)の前18日間。
つまり10月半ばから11月初旬までだ。この時期は呼吸器系の弱い人は十分に注意しよう。咽喉が痛くなっても、春の土用は声帯に関係のある部分が罹病しやすいのだが、秋の土用は扁桃腺炎とか肺炎になりやすいものだ。秋の金気は肺を司る

冬の土用は立春(2月4日頃)の前、18日間。
1月中旬から2月初め。冬は水性なので、この時期の風邪は、細菌による膀胱炎や腎盂腎炎が心配だ。腰痛がある時や、治っても治っても風邪を繰り返すような場合は、腎臓を疑ってみる必要がある。また、冷えにも注意だが、特に手先足先などの血行をよくするような対策を心がけよう。


命式と健康

体質や健康と五行との関係は、非常に興味深い。命式を見てどこに弱味があるかを判断することもできるが、罹りやすい病気、持病がある場合は、ややこしい命式を見なくても分かる。
「そういう体質なのでこういう命式である」、又は「命式にこう出ているから、たぶんこういう傾向があるだろう」
演繹と帰納のどっちでも良いが、命式や暦から事象を推測する演繹法は、あまり細かいことまでは分からないものの、大筋を外さないだろう。
風邪の症状一つ取っても、咽喉風邪と腎臓に来る風邪では全然違う。これを、春の土用と冬の土用に帰納させて考えてみるのも面白いだろう。

もう一つの方法は、空亡がどの月にあるかで見ることもできる。肝臓に持病があって辰巳空亡だったりすると、春の土用時期が一番要注意なので、この時期に肝臓に負担がかかるようなことはなるべく避けたいわけだ。つまり、興奮したり大きな声を出したりも禁物。
午未空亡で活動的なタイプだったら7月の夏風邪には特に注意。早口で喋ったりけたたましく笑ったりを慎み、飲食も控え目にする必要がある。汗をかきすぎるのも要注意。

後は、他の五行の章を参照してみて欲しいが、これらは普段から注意することはもちろんのこと、特に空亡期と土用が重なる場合は、その傾向が強いということだ。初めから分かっていれば、その時期に大きな仕事を入れたり無理をしないように、調整することができる。

季節を司るのは本当は土用であり、ものみな移り変わる時にはいろんなチャンスもあれば危険もある。それがどこの土用に集中しているか、何となく意識すると、自然の流れに逆らわないような生き方のヒントになるのではないだろうか。

(2008年5月記述)

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